COMMENT

(敬称略/五十音順)

大きな何かを失った時に生まれた“心の空白”を埋めるには、一体何が必要なのか?どう生きるのが正解なのか?現代という地獄を生きる登場人物たちが、我々に問いかけてくる。正直、大傑作だと思う。

赤ペン瀧川(映画プレゼンター)

人と人はわかり合えるなんて幻想を持つよりも、わかり合えないはずなのに
向き合い寄り添おうとしてくれることに感謝したほうがいい。
人間の何を汲み取るかが救いにもなる。
『空白』は、そんな優しさに満ちている。

新井英樹(漫画家)

𠮷田恵輔の映画を最初に見たのは『ヒメアノ~ル』だった。こんな凄い映画を撮る監督がいたのか、と過去作をさかのぼり、それまで見ていなかったことを恥じた。ごくありふれた人々からここまでのドラマを引き出す力はただ事ではない。『Blue/ブルー』、『空白』という2本の傑作が公開される2021年、この特集を組めたことは大きな喜びである。

市山尚三(第34回東京国際映画祭プログラミング・ディレクター)

怒鳴る、怒鳴る、怒鳴る
拒絶でコーティングした心では何も守れなかった男。
守れなかった人間のその先を描き切った傑作だ。

犬山紙子(エッセイスト)

苦しかった。劇中の事故現場が僕の実家の近所なので、今後あの道を通るの怖いです。どうしてくれるんですか。それぐらいリアルで衝撃的だった。重たい気持ちは観終わるとちょっとだけ晴れた。そのちょっとがでかい。

大橋裕之(漫画家)

観終わったあとは静かな涙が流れ、余韻と共に心の中には確かに感じる「空白」が、そこにありました。古田新太さん演じる添田の涙をはじめ登場人物一人一人の涙の意味がとても深い。こんな映画は初めて観ました。

尾上右近(歌舞伎俳優)

この映画はメディアへの挑戦である。
情報番組のコメンテーターとして出演する僕は、今後コメントするたびにこの映画を思い出すだろう。
当事者にしか分からない事実がある。僕らは何も知らないんだ。

小原ブラス(コラムニスト)

被害者が加害者となり、加害者が被害者に転じる現代社会。松坂桃季を土下座させる古田新太の怒りと哀しみに、こちらまで身が硬くなり----。見逃してはもったいない第一級の、 社会派エンターテイメントである。

北川れい子(映画評論家)

“クズ人間”の古田新太(添田)が真に迫って見えたのは、自分の中に相似形を見つけたから。だからイラつくし、だから愛おしくてたまらない。

近藤サト(ナレーター/フリーアナウンサー)

「万引きをした女子高生が逃走中に事故死した」
このニュースを見て、私はどこまで想像できたのでしょうか。

今の日本がすごくリアルに表現されていて、ドキュメンタリーを見ているようでした。

信じたいことだけを信じ、決めつけ、狂っていくことにも気づかない父(添田充)の、
店長青柳らに対する狂気的行動は生々しく、そして痛々しく感じていましたが、
この作品に登場する全ての人物は誰でもなりうるのだと気づいたとき、とても怖くなりました。

日本人の課題図書ならぬ課題映画になれば少しでもいい方向に変わるのかな、、?と思わせられる作品でした。

しばたま(デザイナー/イラストレーター)

耐えがたい喪失の先に、人は何を見るのか。この物語には、その答えが在る。
痛みは癒えず、命は戻らない。心の空白を抱えて生きるしかない。でも、それでいい。
あまりにも多くをなくした、僕たち自身の映画。どこまでも苦く、暖かい。

SYO(映画ライター)

Kuhaku (Intolerance) is a very strong film, with a very good script, good editing and acting.
『空白』は素晴らしい脚本、編集、演技に裏打ちされた、とても強烈な作品です。

ジョヴァンナ・フルヴィ(映画祭プログラマー/キュレーター)

凄まじいものを観てしまった、
言葉にならない程に。

偶然にも関わってしまった者たちの人生が脆くぽろぽろと崩れ落ちていく。
決定的に区分されない善と悪に、“罪"とはなんたるものか。悪意だけでなく善意にも追い詰められ、正しさと赦しの難しさを知る。
人間を追い込むのも人間であり、その心を救うのもまた人間である。
折り合いのつけられない怒りや空虚感を抱え続け、誰しもに存在する心の"空白"にどうやって希望を見出し生き続けるのか。
あらゆる視点での衝突に息苦しさが加速していく。

頭が痛くなる程に強烈な107分間、
極限の集中力で混沌へと引き摺り込まれる。

テラシマユウカ(PARADISES)

一つの事件を交差する幾つもの感情が、悲しいほど離れ離れに暴走する姿がこれでもかと心を揺らす。永遠に続きそうな緩慢な絶望と時にうねりを起こす暴力的な希望。漁村に暮らす力なき人々の前に立ちはだかる海のように、寄せては返す人間の感情をこの映画は一度も手を緩めず描こうとする。どれほど思いを寄せようと、彼は彼女になれないし、私はあなたにはなれない。わかり合えない失望を今日また明日と踏み分けて進む。それぞれの織りなす感情が思いがけず一つの波を描く瞬間を、ひたむきに息を潜めて待ちながら。

鳥飼茜(漫画家)

心が冷える苦しみと痛みの連鎖。こんなに悲しい風景に、悪人が見当たらないことが辛い。在るのは、我々と同じ日常と普通の人々、国道、海苔弁、通行止め。誰も悪くないが、誰もが悪い。正しさとは、何だろう。

野々村友紀子(放送作家)

“Intolerance” uses a tragic accident, with no one really to blame, to investigate not only how the mass media preys and the local community shuns – both all-too-familiar tropes in Japanese films – but how the process of grieving and forgiveness truly works, without painting the participants purely wrong or right. Like Yoshida’s previous films it traffics in extreme acts and emotions, but with subtlety and nuance and, for even the weak-spirited and wrong-headed, insight and compassion.

『空白』は誰も責められない悲劇的な事故を舞台に、邦画ではなじみ深い題材である、いかにマスメディアが餌食にし、いかに地域社会が疎外するかということを掘り下げるだけでなく、悲しみと許しのプロセスがどのように進んでいくのかを、関係者を単に善悪で描くことなく、上手く表現しています。吉田監督の過去作品のように、本作は極端な行動と感情が行き来しつつ、繊細でニュアンスがあり、弱気でひねくれものでさえ、洞察と思いやりがあります。

マーク・シリング(The Japan Times シニア映画批評家)

本作は「真の弔い」とは何かを描く。娘への「真の弔い」から最も遠い場所にいると見えた父親が─彼だけが─「真の弔い」に辿り着く。娘と「同じ世界」を生きるようになるのだ。僕は、涙を抑えることができなかった。

宮台真司(社会学者)

この映画には、泥のように不確かで不安定な道を、それでも一歩ずつ足元を確かめながら、支え合いながら、その重さや苦しみを感じながら前に進んでいくひとたちの姿が、誠実に描かれていました。

「前を向いて生きる」というのは、決してポジティブでなければいけないわけじゃなく、揺れながら、心のバランスを保ちながら、希望を見出そうともがくことなのかもしれない。

多くの人が心の奥に抱えていて、普段隠れていて誰にも見えないような気持ちを、この映画が大切に掬ってくれている気がしました。

渡辺大知(ミュージシャン/俳優)